還暦

オヤジが還暦だそうです。普段父の日とかそういうイベントでもスルーしているわたしですが、目の前で兄弟が親父にプレゼントしているのを見てしまうとさすがにばつが悪いので、早急に何か物を探さないと、と思い街へ繰り出した。兄弟はどうやら焼酎やら靴下やら消耗品というか実用品をプレゼントしたみたい。オヤジの趣味はプラモデルや特撮などである。そして、わたしはこういうのは値段より気持ちだと勝手に考る。導き出された結論はおもちゃ屋に行きプラモデルで済ませてしまおうとした。

目的地に着き、物色する。いいのを見つけた。なんか変な戦闘機のプラモだ。値段は200円。値段など関係ない、こういうのは気持ちだ、値札をはがせばばれない問題ない。お父様還暦の祝いに200円のプラモデルを送ります。

 

さっさと会計を済ませようとしたところ。ふと、目に留まる。モゲラの人形だ。モゲラとはその昔地球防衛軍という映画に登場したロボットである。見た目はダサい。オヤジはこのての特撮がすきなのである。この方がいいと思ったが値段が3000円弱だ。200円で済ますつもりが3000円。迷う。何を迷う必要があるのかとお思いかもしれないがわたしにとって3000円は大金なのだ。迷ったが、還暦など一生に一度、つきに親父にプレゼントする機会など墓前に何か添える程度かもしれないと考えモゲラを買った。少し大げさかもしれないがわたしのような人間がプレゼントに3000円も賭けるなどめったにないことだ。とはいえ3000円。これを買うだけであれこれ悩むわたしの価値観はなんとも安いものであろうかと帰り道少し考える。

ダサい人形であるがオヤジは予想以上に喜んだ。わたしからプレゼントをもらうことに感激したのか、それともたまたま怪獣特撮のすべてみたいな良くわからないムック本を読んでいたところにちょうどモゲラをプレゼントしたのでタイミングが良かったのか。どちらか知らないが3000円で喜んでもらえて何よりだ。

 

これでわたしに対しての家庭の評価も少し上がることだろう。大黒柱を取り込み、味方に付けるのがこのプレゼントの目的なのだ。これにより、わたしの実家パラサイト生活の期間が延長されることになるだろう。